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支店の設置・移転・廃止

                                                

支店の設置・移転・廃止とはどういうこと

登記するべき「支店」とは、会社の本店とは別に独自に営業活動を決定し、対外的な取引をなし得る営業所の実質を備えるものをいいます。これに対し、全て本店の管理下に置かれ独自の決定権を持たない営業所は支店として登記する必要はありません。支店の設置とは、前述の、独自の決定権を持った支店を新しく設置することであり、移転とは既存の支店を別の場所に移すこと、廃止とは既存の支店をなくすことをいいます。

                                                 

どんなときに支店設置の登記が発生するのでしょうか

本店とは別に、独自に決裁権を持ち取引の主体となるような支店を新たに設置した場合に登記する必要があります。もともと本店の指揮下に置かれていた営業所が、独自の決裁権を持つようになった場合にも、支店設置の登記が必要になります。

本店の管轄区域内に支店を設置したのであれば、本店を管轄する法務局に支店設置の登記を申請するのみですが、本店の管轄区域外に設置した場合は、別途、設置した支店所在地を管轄する法務局にも登記申請が必要になります。(本店と支店で一括して登記申請することは可能です。)ここで、新たに支店所在地の管轄法務局に会社の登記記録が作られることになります。

以前は、支店でも本店所在地と同様の事項が登記されていましたが、会社法の施行後は支店所在地の登記事項が簡略化され、①商号、②本店、③会社成立の年月日、④その管轄の支店所在地のみになっています。

                                                               

支店の移転や廃止時にも登記が必要です

同様に、支店の移転や廃止時にも、その旨の登記が必要になります。この場合も、本店や、移転前の支店所在地、移転先支店所在地の管轄が異なる場合は、それぞれに申請が必要になります。(一括して登記申請することは可能です。)

また、支店の登記事項である、商号を変更した場合や本店を移転した場合にも、本店の管轄で変更登記をすることに加えて、支店の管轄でも変更登記をする必要があります。会社法施行前と比べて、支店所在地での登記事項が少なくなった分、支店登記の費用や手間の負担も減りましたが、その分、商号や本店を変更した場合に支店所在地での変更を忘れるケースが多くなっておりますので注意が必要です。

                                                      

支店の設置・移転・廃止時に登記をしなくてはならない理由

会社法上、支店の設置・移転・廃止等があった場合、本店所在地では2週間以内、支店所在地では3週間以内に変更の登記を申請しなければならないと定められています。登記の申請をせずに放置してしまうと、裁判所から過料の制裁を受ける可能性があります。

商業登記の制度というのは、商号や本店、事業目的、資本金、役員等、会社にとって重要な事項を公示することにより、会社の信用の維持を図り、取引を安全かつ円滑に行うことを目的にしているため、会社の実態に変更があった場合は速やかに登記簿に反映させる必要があるのです。支店も、独自の決裁権を持った会社の出先ですから、取引先にとって重要な事項であると言えます。

登記には、用意しなければならない書類も多く、面倒な手続きではありますが、登記事項に変更があった場合に速やかに変更登記手続を行うことで、取引相手や金融機関からの信用にもつながりますので、きちんと変更登記手続を行うことが大切だと言えます。

                                                     

登記完了までの流れ

支店の設置・移転・廃止は、取締役会の決議又は、取締役会を置いていない会社であれば取締役の過半数の一致により決定する必要があります。

そして取締役会議事録等必要な書類を整え、登記の申請書を作成し管轄の本店と支店を管轄する法務局に登記の申請をする必要があります。

不備がなければ1週間から2週間ほどで登記は完了しますが、不備がある場合、再度法務局に足を運ぶ必要があります。

                                                    

支店の設置・移転・廃止の登記を自分で行うことは可能?

支店の設置・移転・廃止の登記手続きは高度な専門的知識がそれほど必要な登記ではありませんから、時間を掛ければ自分で行うことは可能です。しかし、登記手続きを自分で行う場合には、かなり複雑な作業に戸惑うことは間違いありません。人によっては、自力で進めた場合、1ヵ月以上かかることもあるでしょう。

登記の手続きは、必要な書類一式を揃え、管轄する法務局の審査を受け、不備なく通す必要があります。申請書はどのように記載すればいいのか、収入印紙はいくらなのか、どこの法務局に提出するのか、申請書以外に必要な書類は何か、どの書類に何の押印が必要か、これらの情報はネットでも調べることは可能ですが、非常に膨大な情報となり、支店の設置・移転・廃止の手続きだけでも正確な知識を身に付けるのは困難です。

時間を掛けて調べても法務局の補正指示があれば、都度出向いて直す必要があります。実際にそれだけ手間のかかる作業でなければ司法書士に依頼する必要はありません。それでも、登記の知識は司法書士以外には本業で役に立つことはほとんどないでしょう。

ですから、自力で行うことは可能と言っても、必要以上に登記手続きに手間や時間がとられ本業に支障がでては本末転倒ですから、これらを踏まえた上で検討する必要があると言えます。

                                                   

支店の設置・移転・廃止の登記を自分で行うメリットとデメリット

メリット

・費用を削減できる
自分で登記手続きをする場合、司法書士に支払う報酬は発生しませんので、費用を抑えることができます。

デメリット

・手続きに時間を割く必要がある
人によっては支店の設置・移転・廃止の登記手続きに1ヵ月程時間を割かれることもあるでしょう。必要な書類は複数ありますし、記載内容も決まったフォーマットがあるわけではありません。法務局とのやり取りや、手続きの流れを把握するだけでも想像以上に複雑な作業となります。

・法務局へ出向くケースもある
登記の申請手続きでは、法務局の審査は厳しいため、司法書士でも書類の不備で補正を受けることがあります。補正とは法務局による書類審査上で不備があった場合の通知です。補正通知があった場合は、内容によっては法務局に出向いて書類の内容を訂正する必要が出てきます。管轄の法務局によっては半日作業となります。

・詳しく調べても本業には役立たない

会社登記はもっぱら会社の基本的な事項を公示する機能となりますから、経営者であれば当たり前に把握している内容です。しかし、その登記手続きは専門性を極めており、本業ではほとんど使わない知識ばかりですから苦労して調べても見返りは非常に少ないと言えます。

・費用削減できるといっても頻繁に必要な手続きではない

会社登記は頻繁に必要な手続きではありません。そもそも会社の基本的なことが登記されているので、変更されないのが基本です。ですから費用削減の効果としては微妙と言えるでしょう。